ごあいさつ







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Editor's Museum
小宮山量平の編集室
ある日、父が私に語りはじめました。
「日本の若者たちのために、今作りたい本があるんだ」

トルストイの作品を含めた全十巻のシリーズ。
その題名と作者名を並べながら、こんな装丁で、こんな挿絵で…と、あたかも出来上った本が目の前にあって、それらをいとおしんでいるかのような父の話しぶりです。"ああ、父は生涯編集者なんだ。父の心の中では編集者としての魂の炎がまだこんなにも揺らめいている…"

「メモをとっておくれ」という父の言葉に鉛筆を走らせながら、秘かに温めてきた思いが、その時突然ある決心となって私の心に湧き上がってきました。

"そうだ「小宮山量平の編集室」をもう一度甦らせてみよう…"

東京神田神保町、古本屋の二階の編集室。
その後の三崎町、小さなビルのやはり二階にあった編集室。私の記憶の中で、父はいつもたくさんの本に囲まれ、机の上には日本中から送られてきた原稿がうず高く積まれていました。その編集室で、精魂込めた作品を手に父と向かい合っていた若き日の作家や画家たち…。

"出会いから本が生まれた"……父の言葉です。
その出会いは今、父のかけがえのない財産となっているばかりでなく、それら幾多の出会いをたどる時、そこに、日本の戦後の出版史が、ほの見えてさえくるのです。

私の決心を聞いて、父は「そんなことはいいよ。」と少しはずかしそうに言ったものです。けれど翌朝、一片の紙切が私に託されました。
「こんな名前はどうかな。」……その紙切には父自身の手で"Editor's Museum"と書かれていたのです。

「そして、私たちの思い」へ